読書メモ
■宇宙軍士官学校4・5(鷹見一幸/ハヤカワ文庫)
宇宙には地球人類と同じルーツを持つ知的生命体がうじゃうじゃいて、実は地球は辺境の未開惑星――という世界で、人類殲滅を目的とした敵から地球と守る為、他の知的生命種族の指導の下、若者たちによる宇宙軍が編成されることになり……というSF。
相変わらず、読み出すといっきに最後まで読みきりたくなる面白さ、なんですが、3巻あたりからの物語の展開速度に、やや置いてけぼり気味。あっさりと行間で省略されたシーンを、もうちょっと読みたい。海外SFのねちっこさに比べて、よくも悪くも軽快。冴えない系主人公が相変わらずの大活躍で、論理的な思考をもとに活躍するので違和感はないんだけど、あの演説の才能だけは、やっぱおまえ天才だろう、と(汗
■檸檬のころ(豊島ミホ/幻冬舎文庫)
タイトル通りな、日陰で咲いた花のような、高校生たちの淡く切ない恋と青春の短編集。
■からかい上手の高木さん(山本崇一朗/小学館)
ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル。中学生の主人公が、隣の席の高木さんにひたすらからかわれる……という、それだけのお話なんですが、顔のニヤニヤが止まらない。1話目から高木さんは思いっきり主人公のことが好きだし、主人公はトラップにひっかかりまくりだしで、いいカモ。好きだから思わずからかうという中学生らしい好意の表現もいい。主人公がうらやましすぎるぞ!な1冊。
■医者が教える正しい呼吸法(有田秀穂/かんき出版)
たまには小説以外で。例えば針に糸を通す時に、集中しすぎて思わず息を止めてしまうように、パソコンやスマホをいじっている時にも、浅い呼吸になりやすいのだとか。確かに、自分にもそういう時があって、息を吸うんだけど、いまいちしっかり息がはいってこない時があります。
で、この本によれば、吐く息こそが重要なのだとか。しっかり吐くと、意識しなくても息を吸うようにできているそうで……うん確かに、しっかり吐ききると、自然と深く息を吸える。ということで、呼吸という当たり前を見直すことができた1冊。
■こちら、郵政省特別配達課(小川一水/新潮文庫)
宅配業に対抗するため、郵政省に設置された特別配達課。超法規的な手段も辞さず、依頼があれば家でも馬でも運んでしまう……そんな彼らの活躍を描いた連作短編集。
リアルな郵便事業の描写と、採算度外視の現実離れした配達任務の絶妙なバランスと、そこで働く主人公たちの配達にかける熱意が面白い。作者お得意の組織物としての魅力に加え、主人公たちのまっすぐさが心地いい。物語としても全2巻で完結しているので、一気に物語を最後まで楽しめます。
■宇宙軍士官学校6(鷹見一幸/ハヤカワ文庫)
んー。ここまでくると、勢いで読んでる感もある。世界観も設定もいいのに、相変わらずのスピード展開&主人公補正で、場面を味わうまえに次へいってしまうのがもったいないような。
■幻想図書館(乙一/集英社文庫)
読者から没原稿を投稿してもらい、それを作者がリメイクするという企画で生まれた短編集。オムニバス的要素が少し。雪の降った日、広場のど真ん中で消えている足跡からはじまる「ホワイト・ステップ」、夜な夜な子どもたちが廃墟になったボーリング場に集まってくる「王国の旗」、高校生の奇妙で少し痛いコミュニケーションを描く「青春絶縁体」……とある街を舞台に、よくある現実に突然割り込んでくるファンタジーが描かれます。元原稿もWEBで読めるらしいので、読み比べれば違った面白さもあるのかも。