読書メモ

■宇宙軍仕官学校-前哨- 鷹見一幸/ハヤカワ文庫
 ライトタッチなSF。異星人の来訪により、銀河文明の一員に昇格した地球。高度な技術を供与される代わりに、優秀な子どもを兵士として提供することを求められ、その為の士官学校が作られる。平凡な軍人だった主人公は、その学校の教官として選抜され……。という、なかなか壮大なお話。仮想現実を使って戦闘訓練をするあたりが「エンダーのゲーム」を思わせます。現在2巻まで刊行され、話はこれからどんどん大きくなっていくはずなので、大長編になりそう。全体的に描写が物足りない感はあるものの、読みやすい文章と、お約束ながら熱くなる展開なども盛りだくさんで、SF初心者におススメ。

■レインツリーの国 有川浩/新潮文庫
 子どもの頃に夢中になった小説がキッカケで、ネット上で知り合った男女の物語。彼女の置かれた境遇から、想い合うのにすれ違う2人が、それぞれの視点から語られていきます。ヒロインの境遇については、説明調が続くのが玉にキズかも? あと、最後まで主人公男性が理解できずに困りました。結局、ヒロインを見守る気分で読み進めて、心地よく読了。物語としては、とてもいい話でした。

■儚い羊たちの祝宴 米澤穂信/新潮文庫
 お嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。それにまつわる5つの事件を描いたホラー調のブラックなミステリ短編集。最後に「そういうことか!」と思わせる仕掛けと、後からジワジワ効いてくる毒が、妙な癖になりそう。

■謎の物語 紀田順一郎編/筑摩文庫
 リドル・ストーリー(結末が描かれず、読者にゆだねる物語)を世界中から集めた短編集。有名な「女か虎か」や「謎のカード」など全15編。「藪の中」のような、もやもや感が楽しめる方、推奨。

■珈琲店タレーランの事件簿 岡崎琢磨/宝島社文庫
 理想のコーヒーを追い求める主人公の青年は、京都の珈琲店「タレーラン」で、上質な一杯と出会う。通い詰めるうち、ちょっとした謎を解き明かしていく、女性バリスタの明晰な頭脳にも魅せられていく。短編集ですが、物語全体に通じる謎には最後まで気付かず、思わず「え!」となりました。

■「ふたりの距離の概算」米澤穂信/角川文庫
 「氷菓」にはじまる古典部シリーズの最新作が文庫化。今回は仮入部中の新入生が入部を辞めてしまった原因を紐解いていく長編。マラソン大会中に回想しながら考えをまとめていくというシチュエーションは面白いものの、過去4作と比べると、事件の規模がちょっと物足りない。長編より連作短編向きなネタかも?
 余談ながら、本のカバーがアニメ化前のテイストなのが嬉しい。裏側が書き下ろしアニメカバーになっていて、従来のファン層もアニメからのファン層も嬉しい仕様。この工夫って結構、重要だと思う。今後、小説がアニメ化した作品は、ぜひこういう工夫を!

■「大きな森の小さな密室」小林泰三/創元推理文庫
 SFやホラー作品でも有名な著者の短編推理小説。犯人あてや倒叙、安楽椅子、バカミス、日常の謎……とバラエティ豊かな7作品。ツッコミどころ満載。個性的な作風があわない方もかなりいそう。僕は大好き。

■「陽だまりの彼女」越谷オサム/新潮文庫
 ベタベタな恋愛小説風の何か別のもの。何を言ってもネタバレになりそうです。オチは嫌いじゃないけど、最後の3ページは、なかった方が好きかな。