Beyond the summer~10年後のあとがきと彼女たちのその後~
「Beyond the summer」公開からはや10年。そして、サイト10周年。そこで、記念すべき第1作をふりかえってみたいと思います。また、物語世界の10年後もちょっぴりのぞいてみようと思いますので、どうぞ最後までおつきあいください。
■2004年
10年前、2004年。ネットは、まだADSLとかISDNとか回線速度が遅い時代で、メインコンテンツはテキストでした。フリーゲーム0も、数メガ程度のものがほとんどで、それでもダウンロードするのに、ずいぶん時間がかかったものです。この作品も軽量化は考慮していて、BGMはMidiのみ、画像も小さいサイズにして使っています。それでも10MBくらいはありますけどね。
しかし、当時の我が家はなんと電話回線でした! この10MB程度のファイルをアップロードするのに、かかった時間はなんと3~4時間! アップロード中に、何度も回線が切断されたせいもありますけど、なにしろ64kbps、テレホーダイですからね。いい思い出です。
そんな環境だったので、フリーゲームを収録したCDが雑誌の付録になる、なんてこともありまして。光栄なことに、この作品も何度か付録CDに収録されたことがあります。掲載のお礼に見本誌を送ってもらえるのですが、後半がエ○ゲの体験版だったり、表紙がそれ系の絵だったりと、置き場に困った記憶があります。
■フリーゲーム
2004年前後は、フリーゲームのちょっとしたブーム期でした。ネットは、ようやくブログが登場してきた頃で、まだまだテキストコンテンツが主流。パソコンはWIN98とかMeで、HDDだってMB単位。時間のあるときにダウンロードして、あとでゆっくり遊ぶというスタイルが、ちょうどよかったのかもしれません。
作り手は、今より少なかったはずです。でも、結構あの頃の作品って今でも楽しめる面白い作品が多いんですよね。レビューサイトもたくさんありました。最近、めっきり少なくなってしまいましたが、新しく開設されるサイトもあったりして、見つけると嬉しくなりますね。
燃え上がった火が、炭火となっていつまでも燃え続ける。そうあって欲しいな、と思います。
そして作る側も。
その後のネットはご存知の通り、ニコニコ動画やYOUTUBEのような動画コンテンツ、mixiやらTwitterやfacebookといったSNS、それからネットゲーム。魅力的なコンテンツがどんどん増えていって、ネットの楽しみはほとんど無限に広がりました。
でも、ゲームを作りたいという人はいつでもいます。ツールもたくさん増えました。素材もいっぱいありますし、仲間も集められます。参考にする作品もたくさんあります。これからフリーゲームはどうなっていくのか。どんな作品が公開されていくのか。楽しみですね。
■青春恋愛ノベル
――学校サボって、このままどこかへ行ってしまいたい。
梅雨の間に訪れた、夏の予告編のような1日。
誰もが一度は思う(?)ことを現実にしてしまった主人公が、行く先々でステキな女の子と出会い、やがて恋に発展していく――Beyond the summerは、そんなお話が4つ楽しめるノベルゲームでした。
青春恋愛ノベルと題打って公開されたこの作品。作った本人は、いたって本気でした。恋愛物のノベルゲームでは、つらい過去を背負った主人公とか、いわゆる鬱展開とか、そうでなくてもシリアスよりな展開が多いですよね。商業作品でも、ちょうどその頃、いわゆる泣きゲーというジャンルが人気ジャンルになっていました。
そんな中、わき目もふらずに青春と恋愛(とハッピーエンド)を目指したのは、なにより作者の好みという一言に尽きます(笑
とはいえ、それがどう受け止められるのかは不安でした。最終的には、笑われるのを覚悟の上、えいっ!と公開した記憶があります。それが、おおむね好意的に受け止めてもらえたようで、とても嬉しかったです。
広く浅くをモットーに、平凡で退屈な毎日に悩む主人公。そして、それぞれに青春の悩みを抱えたヒロイン。そんな2人が出会い、互いの姿や言葉をキッカケにして、少しだけ顔をあげて歩き出す……嗚呼、青春の1ページ(笑
青春って、別に10代の特権ではなくて。むしろ思い切って行動してみる気持ちを指すのだと思います。そういう意味では、作者にとって、この作品そのものが青春の1ページ、だったのかもしれません。とはいえ、あんな青春時代を送りたかったなぁ……と。そう思ったのは、作者だけではないはずです。
■複数ヒロイン
主人公は行く先々でヒロインと出会います。このへんご都合主義ですね。でも、それを言ったら物語なんて、みんな……おっと。ようは手品と同じで、うまーく、ウソ(虚構)を楽しめるように工夫する。それが物語ですからね。
さて、ヒロインが4人。似たようなヒロインにならないように、あれこれ考えました。容姿の描写も性格も口調も。なるべく重ならないように、あれこれ考えていたのを覚えています。ただ、恋愛物のお約束でもある「偶然ヒロインと出会う」とか「出会った女の子に好意を持たれる」という流れだけは、4つとも同じです。
これがプレイヤーからすると、たとえヒロインや設定が違っていても、お約束が4回(4シナリオ)続くことになりますよね。たぶん、1つだけなら許容してもらえると思うんですが。やっぱり「またか」的な感じもあっただろうな、と。このへんをどう解決するか。いまだ、はっきりした解答を得ていません。これが複数ヒロインの難しいところ、かもしれません。
■急展開
今思えば、ジェットコースター級の急展開なお話です。例えば、三崎ひろか編の急展開さなんかは、今読み返してみても、急ぎ過ぎだろうと思います。でも僕は案外、こういうのが好みなんですけどね。恋愛っていうと、まさに恋に「落ちる」という言葉通り、急展開なものをイメージしてしまいます。理屈とか抜きで、流されるかのごとく、ひかれあう。
3回目のデートでキスするとか、メールの駆け引きがどうとか、その他もろもろの面倒くさい手順をすっとばしていく。そんな恋愛感に、夏の開放的なイメージと、旅先のアバンチュール的な要素が加わって、この作品ができあがっています。余談ですが、この作品はあくまで青春恋愛で、純愛ではないと思っています。10代の純粋な思いはありますが、あくまで恋のレベルですね。
急展開といえば、物語内の時間経過も短いです。最短は中央公園編でわずか1日。次いでキャンプ編が1泊2日、袖降山は別日で合計2日、姫浜海岸は1泊2日+1日。後日でそれぞれ+1日されますが、本当にあっという間のお話でした。設定上、こうなる他なかったといえばそれまでですけどね。この恋愛を、もう少し長い期間で丁寧に書いたらどうなるかな、という想いが次回作へつながっていきます。反動で、今度は半年間という設定になりましたが(汗
■絵のないギャルゲ
Beyond the summerを評して、そんな言葉が書いてあったのを見た記憶があります。ギャルゲかどうかは別として。絵がないというのは、冒険でした。恋愛ノベルゲームなのに、1枚絵はもちろん、立ち絵もないですわけですからね。まるでメインディッシュがないような、そんな感じ。
理由の一つに、作者が絵が描けないというのがありました。そして当時は、立ち絵素材も(ほとんど)ありませんでした。でも、普段から小説好きの僕にとって、脳内妄想ほどいいグラフィックはないよな、という思いもありました。それに、恋愛小説があるんだから、特に問題はないだろうと。そう、ふっきった記憶があります。
その代わり、ヒロインの容姿の描写を考えたりと工夫はしました。そして公開後、絵がないことに驚いたという感想はありましたが、おおむね好評でした。かえって自分好みに思い描けたという、嬉しい感想もいただいて、ほっとしました。
例えば、絵が書けないとか、いい立ち絵素材がないという理由で、恋愛ノベルの公開をあきらめることがあったら、それは残念ですよね。恋愛ノベルに限らず、立ち絵はあってもOK、なくてもOK。いろいろあってOK。それがフリーゲーム。
あとは、「萌え」から遠く離れたヒロイン像、という評価もありました。これについては、このへんに書いてあるレビューを読んで、そうかぁそうだったのかぁと、後になって思ったことです。いまだに、萌えの指すものが、いまいちつかめないでいる作者です。
■BGM
当時は無料のmidi素材というと、ウェブサイト用のものがほとんどでした。ゲームのBGMとして使える素材を配布しているサイトを探すのも大変で。ようやく見つけたTAM Music Factoryさんで、贅沢にも必要なBGMをすべて調達することになりました。
その結果、ステキなBGMでゲームをより楽しいものにすることができたと思います。音の統一感も出たので、一石二鳥。タイトル曲が1番好き。
■エンディング
この作品は、分岐&好感度判定型のノベルゲームですが……エンディング数18個は多すぎだな、と。ヒロイン4人のエンディングが4種類と、バッドエンドが2種類。話の規模が小さいわりに、やたらボリュームが大きい。そのくせ、攻略は簡単。
選択肢を選ぶドキドキ感を味わって欲しい、という気持ちから選択肢数を増やした結果なんですけど。話の流れから、分岐した話は絶対に合流しないんですよ(汗)。つまり、それぞれの選択後を、最後まで書くほかなかったという……まぁ、そういうことです。分岐は計画的に(笑
そういえば、最初は三崎ひろか編のみの予定で書きはじめたんですね。気付いたら4人になっていましたけど。不思議ですね。ヒロインは計画的に(汗
難易度が低いのは仕様です。それは、少なくとも2回目にはエンド1にたどりついて欲しいからです。なんていうか、同じシナリオの3周目以降って、いかにも「エンディング回収」的な、作業感が出てくると思うんですね。その作業感でエンド1って、せっかくのハッピーエンドも面白さ半減だよなぁと。3周目以降でやっとエンド1到達という方も、いるとは思いますけど。
■ヒロイン
・三崎ひろか/キャンプ編
クラスメイトの女の子。ボーイッシュでぶっきらぼうな態度ですが、そんな女の子らしくない自分に悩んでいました。主人公よりも乗り気で、行けるところまで行った挙句、大学生グループにまじってキャンプを楽しんでしまうお話(笑)
舞台イメージは奥多摩あたり、かな。一番短いお話ですが、これくらいのボリュームがかえって現実っぽくって好きです。しかし、星空を見上げながら焚き火にあたるというロマンチックな状況とはいえ、あっさり一線越えてしまう(といっても、あくまで高校生レベルで)のは、たぶんスキー場とかでありがちな、非日常に酔ってる的なこともあるかもしれませんね。彼女の、思い切りのいい性格も大きいかな。
とはいえ、日常に戻ってきても、いい関係を続けていますので、もともと波長があう2人だったのでしょう。一緒にいて変に気をつかわずにいられる、貴重な存在ですね。
・御子柴悠里/袖降山編
神社の一人娘。ショートパンツ姿の、少年っぽい容姿をした年下のヒロインです。クラスメイトとうまく関係がきずけないで悩んでいました。山登りの途中、雨宿りをしているときに出会い、酔っ払いのマナー違反と宮司さんでもある父の勘違いとお祭りと花火のおかげで、仲良くなるお話。
舞台イメージとしては東京の高尾山あたり。案内犬、登山客、娘思いの父、と、脇役の多いこのお話ですが、なにより夏祭りと縁日、縁側で花火、という夏のお約束がたっぷり。花火からの急展開は、このままだと、もう次は会えないかもしれない、という焦りもあったのでしょうね。
ちなみに、旅に出た男を女が袖を降った見送ったという言い伝えから袖降山という名前になったという設定がありましたが、作中では語られませんでした。
・支倉渚/姫浜海岸編
大学生。天然で無防備で方向音痴、と三拍子そろった年上の女性。心の痛手を抱えていました。
海へと向かう列車に乗った主人公が降りた駅、姫浜海岸。そこで偶然出会った彼女は、その海岸に残る古い言い伝えを調べていました。悲しい七夕の昔話に隠された真実、海岸に沈む夕陽、そして同じ部屋で1泊してしまうお話。
舞台イメージは伊豆の熱川あたり。年上だけどどこか頼りなくて、でもお姉さんぶった態度だったりと、いろんな面のある女性ですね。夏、海ときて年上の女性はコンボだったのでしょうか。一番人気のあったヒロインです。
ガス欠で、ペンション1泊。しかも同室。でも、そこでは何も起きないで、あっさりと翌朝になってしまう。これはリアリティなのかファンタジーなのか、意見の分かれるところです(笑
姫浜の昔話は、似たような話はたくさんあるとは思いますが、一応オリジナルです。民俗学は表面をさらっとかじっただけですが、今思えばもう少しちゃんと勉強しておけばよかったかなぁ、なんて思います。
・渡瀬陽子/中央公園編
クラスメイトで、クラス委員長。名前の通り明るくて元気な、クラスの人気者的な存在。彼女は、家庭の事情から、ちょっと元気をなくしていました。駅から公園へ向かう途中、商店街でバッタリ出会ったことから、一緒になって学校をサボって、公園でデートして、迷子の女の子をあやして、昼寝して、というお話。しかし、なんとも大胆な委員長ですね。
舞台イメージは、多摩川あたりと立川駅前の某公園と井の頭あたりをごちゃまぜにした感じ。いつも明るく元気にしているけど、彼女もそれなりに悩みがあって、誰かの助けを求めている。その時に、思いを寄せている相手がそばにいて、もうあとは思い切って近付いていくだけ、そんな普段見せない姿に、ころっと参ってしまう主人公だったのでした。
いろいろと振り回されそうですが、健気なところもある女の子ですね。
・主人公
広く浅くをモットーにしながら、平凡な毎日が続くことを悩んでいる。書いてみると、実に矛盾した事を言っている主人公です。情けない主人公はイヤだな、と思っていたので、意外とカッコいい言動をしたりもします。イケメンではありませんが、精神的にはカッコいいものを持っている……そんな主人公でした。
■10年後
さて、10年後のヒロインたちは、どうしているのでしょうか。最後に少しだけ、物語世界をのぞいてみることにします。
■三崎ひろか 17歳→27歳
あの夏の後、ふっきれた彼女は、クラスメイトとも交流を持てるようになり、彼女なりに充実した高校生活を送りました。部活には入っていなかったので、いつ頃からかターミナル駅の駅前にある古着屋でバイトをはじめました。接客らしい接客をしないわりに、不思議と客から好かれ、彼女のアドバイスを求める女の子が集まってくるようになります。
それがキッカケで洋服に興味を持ち、卒業後は服飾系の専門学校へ進学。その後、アパレル業界に就職して、海外の少し変わったファッションを取り扱う会社のバイヤーとして働いています。男っぽい容姿と、ぶっきらぼうな言動は相変わらずです。行動力と、変わったものを見つけてくるセンスには、周囲から一目置かれているようです。
口数が少ないせいで、周囲からはミステリアスな存在(あるいは不思議なヤツ)としてみられています。仲良くなると思いのほか心を開いてくるので、少ないながらも友人には恵まれています。未だ独身です。恋バナや彼氏の話となると、少ない口数がさらに減って、不機嫌そうになってしまうので、周囲も気になりながらも聞けずにヤキモキしています。
お酒には強い彼女ですが、深酒すると心のドアが開いてきます。腐れ縁とか相棒とかそういうヤツがいるにはいるとか、そんなことをモゴモゴと言うことがあるみたいですね。
■支倉渚 20歳→30歳
姫浜の民俗調査をあきらめた彼女でしたが、なんとか別のテーマで卒業論文を書き上げ、無事に卒業しました。さらに大学院へ進み、研究者への道を歩んでいきます。やがて、大学という狭い世界、自分自身の狭い人間関係に息苦しさを覚えるようになり、研究にも身が入らなくなってしまいます。
悩みに悩んだ末、彼女は大学院を中退してしまいます。そして、就職活動をはじめますが、いまいちうまくいきません。そんなある日、地図を片手に目的地につけないまま、面接の時間が過ぎてしまうという失敗を繰り返し、衝動的に愛用の軽自動車で日本縦断の旅に出てしまいます。
方向音痴と無防備な性格を心配する弟が、何度も電話で説得を重ねますが、まったく聞く耳を持ちません。そして約1ヶ月にも渡る長旅から無事に帰ってくると、その助手席には道路マップ片手に爆睡する男性が乗っていました。どうやら心配のあまり、電車をのりついで追いかけていった人がいたのでした。
その後、彼女はその助手席の男性と結婚。一児をもうけ、主婦としての日々を送っています。昔話の収集は、民間研究者としてライフワークにする一方、昔話や言い伝えに関するエッセイなどを書くライターとしても働いているようです。
■御子柴悠里 16→26歳
高校に復帰した彼女でしたが、いまいちクラスメイトとはぎこちなく、勉強にも身が入らずの、不完全燃焼な日々を送っていました。ちょうどその頃、袖降山や袖降神社を訪れる外国人観光客が増え、父の手伝いで観光ガイドをすることになります。
外国語にも苦労しましたが、なによりも自分の父が宮司をつとめる神社や、地元の歴史や由来について何も知らないことに気付き、興味を持ちはじめます。やがて、大学で学芸員の資格を取ろうと決意し、無事に希望する大学へ合格します。サークル活動もせず、合コンの誘いも断って、勉強一筋の彼女は、周囲から奇異の目で見られていたようです。
同年代との付き合いが少し苦手、という性格もありましたが、勉強が得意というわけではなかったので、学芸員という目的に向かって努力するので精一杯だったのです。彼女には心強い味方がいるようで、そんな周囲の目も気にせずに、無事に4年間を過ごせたようです。一途に努力する彼女に好感を覚える友人もいて、彼女なりに大学生活を楽しめたようです。
卒業後は、市役所に就職。市立資料館の学芸員として、伝統芸能の展示企画などをする一方で、地元の観光発展の為の活動もしています。幼い頃から、神社の娘として何かと地元で噂される彼女でしたが、最近では、そろそろいい人はいないのかと婦人会で話のタネになっています。
ただ、毎年お祭りになると必ず手伝いに来る人が、どうやら彼女のいいひとらしい、との情報が入るや、次のお祭りを違った意味で楽しみにしている人がいるとかいないとか。
■渡瀬陽子 17歳→27歳
高校2年までは中の下といった成績の彼女でしたが、受験勉強ではかなり努力して、県立大学へ進学します。ところが、一緒に合格を目指していた人とは、残念ながら別々の進路となってしまいます。実家を離れて一人暮らしをはじめ、大学生活を謳歌する彼女。一方で浪人生活を送るその相手とは、少しずつですが決定的に距離が開いていきます。
メールを送っても返事が届かなくなり、彼女も大学生活に追われ、なかなか会えない日々が続き、疎遠に。大学3年の夏、教員免許を取得するため、彼女は教育実習で母校へ戻ってきます。忙しい実習の合間に連絡をとろうと試みますが、どうしても勇気が出ません。偶然の再会も叶わず、実習は終了してしまいます。
ところが最終日の夕方。実家近くにあるお気に入りのラーメン屋さんで、思わぬ再会を果たします。バイトの店員さんが、その相手だったのでした。バイトが終わり、2人は夜の商店街を歩きます。正直な気持ちを打ち明けると、相手もまた気持ちを残したままだいうことがわかります。一浪して近くの大学には進学したものの、彼女と同様に、連絡を取る勇気がなかったのです。
お互い、思いを言葉にして伝えあった2人は、数年間の時間を埋めるかのように、関係を深めていきます。やがて2人は同棲をはじめます。やがて彼女は教師としてのスタートを切り、相手の就職を待って結婚。共働きの2人はすれ違いも多いようですが、「楽しいことってね、みつけるものなんだよ」という彼女の言葉通り、あれこれ工夫して、毎日を楽しく仲良く暮らしているようです。
■というわけで。
話は尽きませんが、そろそろ終わりにしたいと思います。最後までおつきあいありがとうございました。嬉しいことに、10年経った今でも遊んでくれる人がいて、あれこれ感想をもらったりもして、本当に公開してよかったなぁと思います。
10年も経つと、いろいろと直したいところもあります。いっそ全部書き直したいという衝動もないわけではありません。でも、たぶんこのままにしておくと思います。好きな本を、ふと読み返す感覚で。またダウンロードして遊んでくれることを願って。
フリーゲームは、公開停止になってしまう作品も多いですよね。感想だけが残っていて、ちょっと寂しい気持ちになります。でも、このゲームにかぎらず、僕の作品は、作者から公開停止にすることはありません。読んでもらってこその物語、ですからね。
■あの夏の向こうへ……
現実逃避でもいい。だまって、ただあきらめているよりは。
本作が、何か一歩踏み出すための、ほんの小さな追い風になれたら。
そんな願いをこめて。
それではまた、次の作品で。
14/07/06 あいはらまひろ